治療や薬の影響で免疫力が低下している方のための感染症対策

治療や薬の影響で免疫力が低下している方のための感染症対策

がんで治療中の患者さん、手術後の患者さん、免疫抑制剤を服用中の患者さんなど、免疫力が低下している方は感染症に対する不安を抱えていることも少なくありません。ご家族への影響を心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、免疫の仕組みや免疫力が低下している方がご家庭で実践できる具体的な感染対策、ワクチン接種の考え方について、専門的な情報を分かりやすく解説していきます。

目次

なぜ免疫力が低下していると感染症リスクが高まるのか?

私たちの体には、ウイルスや細菌が体の中に入ってしまったときに、それらを排除したり、増殖するのを抑えたりする仕組みである免疫が備わっています。
(免疫の仕組みについて、詳しくはこちらをご参照ください。)

免疫の仕組みについて

 

私たちの体を守ってくれる免疫ですが、がんで治療中の患者さん、免疫抑制剤を服用中の患者さん、手術後の患者さんなどでは低下しやすいことが知られています。その理由として、例えば免疫抑制剤には、体内で起こっている過剰な免疫反応や炎症反応を抑える働きがあります。その働きにより、免疫の異常が関与している病気の治療に対する治療効果が期待されますが、外部からの病原体を排除したり、増殖を抑えたりする力も低下してしまいます。免疫力が低下した状態は病原体に感染しやすく、重症化しやすいため注意が必要です。

免疫力が低下している時にかかりやすい感染症

免疫力が低下している時にかかりやすい感染症について、一般的な感染症と日和見(ひよりみ)感染症の2つに分けて解説します。

インフルエンザや新型コロナウイルスなどの一般的な感染症

免疫力が低下している⽅は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、肺炎球菌感染症などの感染症にかかると、重症化しやすいとされています。
インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、肺炎球菌感染症は、いずれもワクチンで予防可能な感染症と考えられています。

普段は問題にならない菌が原因となる「日和見感染症」

日和見感染症とは、健康な人には害のないような細菌や真菌、ウイルスなどに感染し、症状がでることをいいます。免疫機能が著しく低下しているときに起こりやすいとされています。

日和見感染症として、以下のような病気が知られています。いずれの病気も国内で承認されたワクチンはありません。

 

  • サイトメガロウイルス感染症
    • ヒトサイトメガロウイルスにより引き起こされる病気です。多くは無症状ですが、思春期以降に初めて感染すると発熱や肝機能異常がみられることがあり、妊婦さんの感染により、胎内の赤ちゃんにも感染して先天性障害を生じることがあります。
  • 多剤耐性緑膿菌(たざいたいせいりょくのうきん)感染症
    • 広域βーラクタム剤、アミノ配糖体、フルオロキノロンの3系統の抗菌薬に対して耐性を示す緑膿菌による病気です。敗血症や骨髄、気道、尿路、皮膚、軟部組織、耳、眼などに症状が出ます。
  • トキソプラズマ症
    • トキソプラズマという寄生虫により引き起こされる病気です。発熱やリンパ節の腫れなどの症状がみられ、妊婦さんの胎内にいる赤ちゃんや免疫力が低下している方が感染すると、脳炎や網脈絡膜炎(もうみゃくらくまくえん)などの重篤な症状を引き起こすことがあります。

免疫力が低下している方のワクチン接種の考え方

ここでは、免疫力が低下している方はワクチン接種が可能なのか、効果はどのくらい期待できるのかについて解説します。

免疫力が低下している方でもワクチン接種は可能?

免疫力が低下している方は、そうでない方よりも感染症にかかりやすく、重症化しやすい状態です。ワクチンのある感染症に関しては、予防接種を受けることで感染リスクや重症化リスクを低下させることができるとされています1)

免疫力が低下している⽅の新型コロナワクチン接種について、厚生労働省は、主治医などに接種の可否を相談する必要があるとしたうえで、他に接種してはいけない理由がなければ接種できるとの見解を示しています2)

がん治療の影響で免疫機能が弱まっている方に対する不活化インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種については、国立がん研究センターが、接種のタイミングを担当医とよく相談したうえであれば、接種は可能との見解を示しています。ワクチンを接種したことが原因でインフルエンザや肺炎球菌感染症を発症することはなく、安全性についてはがんでない人と大きな違いはありません。ただし、免疫機能が著しく低下している時期には、ワクチンを接種しても十分な予防効果が得られない場合があります。

一方で生ワクチンは感染力のあるワクチンです。一般的に免疫抑制効果のある薬を使用している場合、生ワクチンを接種すると感染症が重症化する可能性があるため、生ワクチンは接種できません。

免疫力が低下する治療を受けている中でどのワクチンが優先されるかについては、お身体の状態や治療状況、流行状況などを踏まえて医師とよく相談しましょう。

同居家族のワクチン接種が重要となる理由

免疫力が低下している人と同居している家族の方ができる対策として、コクーニングという考え方があります。コクーニングとは、免疫力が低下している方やワクチン接種を受けることができない方の周りにいる人が、ワクチンを接種して免疫力を高め感染を予防することを繭(コクーン)の中に包まれる様子に例えたものです。実際に欧米では、百日咳ワクチンを含む混合ワクチンを10代で接種することで、10代および20歳以上の患者数の減少とともに、間接的な効果として1歳未満の患者数の減少効果もみられるようになっています。

免疫力が低下している方の感染症対策

免疫力が低下している方は、日頃から手洗い、うがい、人混みを避けるなどの感染症対策をしっかり行う必要があります。

また、自宅を清潔な環境に保っておくことも感染症のリスク低下につながります。免疫力が低下している方が過ごす部屋、台所、お風呂、洗面所、トイレなどをこまめに掃除しましょう。

ご家族も手洗いやうがいを徹底して、健康管理に気を配ることが大切です。ご家族が感染症にかかった時は、別の部屋で過ごすようにして、タオルなどの共用を避けるようにします。

ペットを介して感染症にかかる危険性もあるため、免疫力が低下している方は基本的にペットとの接触はできるだけ避けることがすすめられます。ペットやペット周囲のものに触れた場合には手指をしっかりと洗浄しましょう。ペットの排泄物には直接触れないようにして、どうしても接触しなければならない場合には、手袋とマスクを装着するようにしましょう。

まとめ:不安と上手に付き合い、主治医と相談しながら自分らしい生活を

免疫力が低下している方は感染症にかかりやすく、重症化しやすいため注意が必要です。不安を感じることもあるかもしれませんが、同居している家族と一緒に、適切な感染対策を行いましょう。ワクチン接種については、その方の病状や受けている治療などによって、接種可能なタイミングが異なる場合もあります。正しい知識をもとに適切に判断できるように、主治医と継続的にコミュニケーションをとることが大切です。

 

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ウイルスや細菌から体を守るワクチンの仕組みと免疫の働き

参考文献

  • 1)日本リウマチ学会 ワクチン接種について https://www.ryumachi-jp.com/general/heads-up/
  • 2)厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_qa.html

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